
記事のポイント
- テスト自動化は品質向上と効率化に不可欠。種類と特徴を理解し、自社の要件に合ったツールを選定することが重要。
- UIPath Test Suite、TestComplete、Katalon Studioなど、主要ツールを比較検討し、PoCで効果を検証。
- テストエビデンスの自動生成は時間短縮、正確性向上、効率化に貢献。管理ツール活用で品質改善も可能。
はじめに
テスト自動化は、ソフトウェア開発における品質向上と効率化を実現する鍵となります。近年、DevOpsの普及に伴い、テスト自動化の重要性はますます高まっています。
本記事では、テスト自動化ツールの選定から導入、エビデンス管理まで、具体的な手法と事例を交えながら解説します。最適なツールを選び、効率的なテストプロセスを構築することで、開発サイクル全体の加速と品質の向上が期待できます。
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テスト自動化ツール選定の重要性と考慮点
テスト自動化ツールの選定は、ソフトウェアの品質向上と開発効率化に不可欠であり、自社の開発環境やテスト戦略に最適なツールを選ぶことが重要です。
テスト自動化ツールの種類と特徴
テスト自動化ツールは、開発者のスキルや予算に応じて、ローコード、ノーコード、オープンソースなど、さまざまな種類が存在します。ローコードツールは、ある程度のプログラミング知識を持つテスターが、GUI操作でテストケースを作成できるのが特徴です。
例えば、ATgoはWebシステムを対象としたローコードUIテスト自動化ツールで、AIが画面を自動で読み取り、日本語でテストステップを提案する機能があります。ノーコードツールは、プログラミングの知識がなくても、Webブラウザの操作を記録するだけでテストを作成できるため、技術的なスキルがないチームでも導入しやすいのが特徴です。AutifyやMagicPodなどが該当し、AIがテストシナリオを自動でアップデートする機能も搭載されています。
オープンソースツールは、無償で利用できるものが多く、カスタマイズ性が高いのが魅力です。Seleniumは、最も歴史のあるテスト自動化ツールのひとつで、豊富なリソースが公開されています。Cypressは、エンドツーエンドテストに対応しており、活発なコミュニティによるサポートが期待できます。Katalon Studioは、AI拡張プラットフォームを通じてテストケースを自動生成し、テスト作業を簡略化します。
各ツールは、対応プラットフォーム、得意なテストの種類、導入コストなどが異なるため、自社の要件に合わせて最適なツールを選択することが重要です。
導入前に考慮すべきポイント
テスト自動化ツールを導入する前に、自社のテスト戦略、開発体制、予算、技術スキルなどを十分に考慮する必要があります。まず、どのようなテストを自動化したいのか、テストの目的を明確にすることが重要です。
次に、現在の開発体制で自動化ツールを運用できるのか、必要なスキルを持つ人材がいるのかを確認します。予算も重要な要素であり、ツールのライセンス費用だけでなく、導入支援やトレーニング費用、運用コストなども考慮に入れる必要があります。
導入を成功させるためには、PoC(概念実証)を実施し、ツールの機能を実際に試してみることをおすすめします。PoCでは、実際のテストケースを作成し、自動化の効果や課題を検証します。また、テスト結果の分析やレポート作成機能も評価し、自社のニーズに合っているかを確認します。
PoCの結果を基に、導入するツールを決定し、段階的に自動化を進めていくことが、テスト自動化を成功させるための重要なステップです。
主要なテスト自動化ツールの比較と選定
UIPath Test Suiteは、ローコードでテスト自動化を実現するツールとして、ソフトウェアアプリ、基幹システム、Webサイト、APIなど、幅広いプラットフォームに対応しています。特徴としては、テストシナリオの作成と自動化、Microsoft OfficeやGmailとの連携機能、AIの活用、そして一元管理機能が挙げられます。
特に、直感的な操作性は、プログラミングの知識がないユーザーでも容易にテスト自動化を導入できるため、学習コストの削減に大きく貢献します。AIを活用したテストは、テスト精度の向上に繋がり、より高品質なソフトウェア開発を支援します。また、一元管理機能により、テストプロセス全体を可視化し、効率的なテスト管理を実現します。UIPath Test Suiteは、テスト自動化の導入を検討している企業にとって、有力な選択肢の一つとなるでしょう。
TestCompleteは、ノーコードでWeb、モバイル、デスクトップアプリケーションのテストを自動化できる強力なツールです。多言語をサポートしており、世界中の様々なアプリケーションに対応可能です。柔軟なテスト設計が可能で、AI視覚認識により、動的なUI要素も正確に認識し、テストの信頼性を高めます。並列およびクロスブラウザ/デバイステスト機能により、テスト時間を大幅に短縮し、開発サイクルを加速します。
また、他のテストフレームワークやCI/CDツールとの連携も容易であり、既存の開発環境への統合もスムーズに行えます。TestCompleteは、広範なテストニーズに対応できるため、大規模な開発プロジェクトや多岐にわたるプラットフォームをサポートする必要がある企業にとって、最適なソリューションとなるでしょう。
Katalon Studioは、自動テストの計画、作成、実行をAI拡張プラットフォームを通じて行える、オープンソースのテスト自動化ツールです。ローコードとフルコードの柔軟性を兼ね備えており、プログラミングスキルに応じてテストを作成できます。計画から実行まで一元管理できるため、テストプロセス全体を効率化できます。AI技術を活用してテストケースを自動生成する機能は、テスト作成の時間を大幅に削減し、より多くのテストカバレッジを実現します。
Katalon Studioは、テスト自動化をこれから始める企業や、既存のテストプロセスを改善したい企業にとって、強力な味方となるでしょう。特に、AIを活用したテスト自動生成機能は、テスト工数の削減に大きく貢献します。
ツール名 | 特徴 | 主な機能 | メリット |
---|
UIPath Test Suite | ローコードでのテスト自動化 | テストシナリオの作成と自動化、Microsoft OfficeやGmailとの連携、AI活用、一元管理 | 直感的な操作性、学習コストの削減、テスト精度の向上、高品質なソフトウェア開発支援、効率的なテスト管理 |
TestComplete | ノーコードでのテスト自動化 | Web、モバイル、デスクトップアプリのテスト自動化、多言語サポート、AI視覚認識、並列/クロスブラウザテスト | テスト時間の短縮、開発サイクル加速、広範なテストニーズに対応、大規模開発プロジェクトや多岐にわたるプラットフォームをサポート |
Katalon Studio | AI拡張プラットフォームによるテスト自動化 | テストの計画、作成、実行の一元管理、ローコード/フルコードの柔軟性、AIによるテストケース自動生成 | テストプロセス全体の効率化、テスト作成時間の削減、テストカバレッジの向上、テスト工数の削減 |
効率的なテストエビデンス作成と管理
テストエビデンスの作成と管理は、テストの品質を保証し、改善に繋げる上で不可欠です。効率的なエビデンス作成と管理は、テスト結果の可視化と分析を促進し、品質向上に貢献します。
テストエビデンス自動生成のメリット
テストエビデンスの自動生成は、テスト仕様書やテスト結果レポートの作成を自動化し、手作業によるエビデンス作成の時間を大幅に削減します。テスト自動化ツールを用いることで、テスト実行と同時にエビデンスが生成され、リアルタイムでの進捗確認や問題点の早期発見が可能になります。
例えば、ATgoのようなツールは、エビデンスの自動収集や自動検証機能を持ち、日本のSI現場に特化した機能を提供しています。これにより、テスト担当者は、より高度なテスト設計や分析に集中でき、テストプロセスの効率化と品質向上に貢献できます。また、夜間や休日でもテストを実行できるようになり、リリースまでの時間を短縮できます。
人間によるテストでは人的ミスが発生しやすいという問題がありますが、自動生成されたエビデンスによって正確性を高めることができます。
エビデンスを自動で収集することで、手動でのエビデンス収集が不要になり、エンジニアの負担が軽減され、作業効率が大幅に向上することが期待できます。特に、複雑なテストや繰り返し実行されるテストについては、自動生成されたエビデンスが有効であり、作業効率が大幅に向上します。
メリット | 詳細 |
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時間短縮 | テスト仕様書やテスト結果レポートの作成を自動化し、手作業によるエビデンス作成の時間を大幅に削減します。夜間や休日でもテストを実行できるようになり、 リリースまでの時間を短縮できます。 |
正確性の向上 | 人間によるテストでは人的ミスが発生しやすいという問題がありますが、自動生成されたエビデンスによって 正確性を高めることができます。 |
作業効率の向上 | 手動でのエビデンス収集が不要になり、エンジニアの負担が軽減され、 作業効率が大幅に向上することが期待できます。 |
エビデンス管理ツールの活用
エビデンス管理ツールを活用することで、テスト結果、テストデータ、テストスクリプトを一元的に管理し、トレーサビリティを確保できます。これにより、テストプロセス全体を可視化し、問題発生時の原因特定や影響範囲の特定が容易になります。
また、監査対応に必要な情報を迅速に提供できるため、コンプライアンス遵守にも貢献します。エビデンス管理ツールは、テストの実行履歴、結果、使用したデータ、関連するスクリプトなどを一元的に管理し、各テストの関連性を明確にします。
これにより、テストのトレーサビリティが向上し、テストプロセス全体の透明性が高まります。例えば、テストが失敗した場合、エビデンス管理ツールを使用することで、どのデータ、どのスクリプトが問題を引き起こしたのかを迅速に特定できます。
また、エビデンス管理ツールは、テスト結果の分析機能を提供し、品質改善のための洞察を得るのに役立ちます。テスト結果の傾向を分析し、潜在的な問題を特定し、改善策を講じることができます。
テスト自動化による品質向上と効率化の事例
テスト自動化は、品質向上と効率化に貢献します。ここでは、具体的な事例を通して、テスト自動化がもたらす効果を検証します。
品質向上事例
テスト自動化の導入は、テストカバレッジとバグ検出率の向上に繋がり、最終的には顧客満足度の向上に貢献します。建設業D社様では、基幹システム再構築においてリグレッションテストを自動化した結果、テストカバレッジが大幅に向上しました。
これにより、潜在的なバグの検出率が高まり、システム全体の品質が向上しました。株式会社SBI新生銀行では、回帰テストを自動化し約300画面の全数テストを実施しています。
人手では困難だった網羅的なテストが実現し、品質向上に大きく貢献しています。テスト自動化によって、テスト担当者はより複雑なテストケースの作成や、探索的テストに注力できるようになり、結果として、より多くのバグを早期に発見し、品質向上に繋がっています。
また、テスト自動化は、テストの実行履歴を詳細に記録し、エビデンスとして活用できます。これにより、バグの根本原因を特定しやすくなり、再発防止策を講じる上で役立ちます。KDDI株式会社では、Webサイトの回帰テストを自動化したことで、毎回1人月分の工数削減を実現するとともに、テストの品質も向上しました。
テスト自動化は、単にテスト工数を削減するだけでなく、テストの品質そのものを向上させる効果があることがわかります。テスト自動化を導入することで、開発チームはより高品質なソフトウェアを、より迅速に提供できるようになり、顧客満足度の向上に繋がります。
効率化事例
テスト自動化は、テスト時間の短縮とテスト工数の削減を通じて、開発サイクル全体の効率化に大きく貢献します。株式会社NTTドコモでは、検証作業を自動化した結果、年間テスト工数を約1/6に削減することに成功しました。
これにより、テスト担当者はより創造的な業務に時間を割けるようになり、開発チーム全体の生産性が向上しました。建設業D社様では、リグレッションテストの自動化により、約5億円のコスト削減と97%のテスト時間短縮を実現しました。
これは、テスト自動化が大規模なシステム開発においても、非常に有効であることを示しています。テスト自動化によって、テスト担当者は、手動テストに費やしていた時間を、テストスクリプトの作成やメンテナンス、テスト結果の分析などに充てることができます。
これにより、テストプロセス全体の効率が向上し、開発サイクルが短縮されます。また、テスト自動化は、夜間や休日にテストを実行することも可能です。
これにより、テスト担当者は、勤務時間外にテストを実行する必要がなくなり、ワークライフバランスの改善にも繋がります。テスト自動化は、単にテスト工数を削減するだけでなく、開発チーム全体の生産性向上、開発サイクルの短縮、ワークライフバランスの改善など、様々な効果をもたらします。
事例 | 内容 | 効果 |
---|
建設業D社 | リグレッションテストを自動化 | テストカバレッジが大幅に向上 約5億円のコスト削減と97%のテスト時間短縮 |
株式会社SBI新生銀行 | 回帰テストを自動化し約300画面の全数テストを実施 | 人手では困難だった網羅的なテストが実現 |
KDDI株式会社 | Webサイトの回帰テストを自動化 | 毎回1人月分の工数削減とテストの品質向上 |
株式会社NTTドコモ | 検証作業を自動化 | 年間テスト工数を約1/6に削減 |
今後のテスト自動化の展望
テスト自動化は、AI技術の進化とDevOps、アジャイル開発との連携により、今後さらに発展していくと予想されます。
AIテスト自動化の可能性
AIテスト自動化は、テストケースの自動生成やテスト結果の自動分析を通じて、テストプロセスの効率化と品質向上に大きく貢献します。GitHub CopilotやAutify Genesisなどのツールは、AIを活用してテストケースを自動生成し、テスト担当者の負担を軽減します。
また、AIはテスト結果を分析し、問題点を特定することで、開発者は迅速に修正対応を行うことができます。さらに、AIの自己修復機能は、テスト環境の変化に自動的に対応し、メンテナンスコストを削減します。T-Planのテスト自動化スイートでは、93.4%の自動修正率を実現しています。
2025年時点では、単体テストコードの7割以上をAIが自動生成するケースも珍しくなくなると予想されています。Explore Testなどのツールでは、AIがテストデータを最適化し、本番環境に近いテストデータをシミュレートすることで、テストカバレッジを向上させます。
これにより、テストケースの抜け漏れを減らし、品質向上に貢献します。AIテスト自動化は、テストプロセスの効率化、品質向上、コスト削減を実現する上で、ますます重要な役割を果たすでしょう。
DevOps、アジャイル開発との連携
DevOpsとアジャイル開発において、テスト自動化はCI/CDパイプラインへの組み込みを通じて、開発サイクル全体を効率化します。GitLab RunnerやJenkinsなどのツールを使用することで、ビルド、テスト、リリース、デプロイの各段階を自動化し、迅速なフィードバックループを実現します。
CI/CDパイプラインを活用することで、コードの変更に関するフィードバックが迅速に得られ、開発サイクルの早い段階で問題に対応して修正できます。具体例として、コードデプロイを最大46倍高速化し、ダウンタイムからの復帰を170倍高速化することが可能です。
また、Zephyr Squadなどのテスト管理ツールは、JiraやConfluenceなどのツールとの連携を可能にし、テストプロセス全体の可視性を高めます。AWS X-Rayは、アプリケーションのパフォーマンスデータを収集し、ボトルネックやレイテンシースパイクを特定することで、品質向上に貢献します。
mablのようなAIを活用したテスト自動化ツールは、テスト作成の高速化とテストの属人化解消を実現し、品質の安定性を効率的に高めます。CI/CDパイプラインを使用することで、バグの早期発見と修正が可能になり、バグ修正率が20%向上することが報告されています。
テスト自動化とDevOps、アジャイル開発の連携は、品質向上と開発効率の向上に不可欠です。

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おわりに
テスト自動化は、品質向上と効率化に不可欠です。最適なツールを選び、エビデンス作成を効率化することで、QAエンジニアはより戦略的な業務に集中できます。
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