
記事のポイント
- AI契約レビューは契約リスクを自動検出し、条項の最適化を支援し、契約業務を効率化します。
- 電子契約システムは印刷代や郵送費を削減し、契約締結時間を短縮、セキュリティも向上させます。
- 契約書管理システムは検索性、アクセス性、保管性を向上させ、契約業務の効率化に貢献します。
はじめに
本記事では、リーガルテック導入による契約業務の効率化に焦点を当て、弁護士法72条との関連性について解説します。
リーガルテックは、契約書の作成、管理、レビューといった業務を効率化し、企業の法務部門や弁護士の業務を支援するテクノロジーです。特に、電子契約やAI契約レビューなどの機能は、業務プロセスの迅速化とコスト削減に大きく貢献します。
本稿では、リーガルテックの基本概念から導入のステップ、注意点、事例、そして今後の展望について詳しく解説します。
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リーガルテックとは:契約業務効率化の定義
本セクションでは、リーガルテックの基本概念と契約業務における効率化の定義を明確にし、リーガルテックが契約業務をどのように変革するかを概説します。
リーガルテックの基本概念
リーガルテック(LegalTech)とは、「法律(Legal)」と「技術(Technology)」を組み合わせた概念で、法務関連業務を効率化するためのサービスやシステムを指します。具体的には、契約書のレビュー、検索、管理などを中心とした業務効率化が可能です。
例えば、AIを活用した契約書レビューサービスでは、不利な条項や欠落条項を瞬時に指摘し、修正案を提示することで、契約業務を効率化します。また、過去の関連文献を迅速に検索し、必要な情報にアクセスすることで、契約書作成業務の効率化も実現可能です。書式自動整理や作成補助ツールを活用することで、契約書データの共有がスムーズになり、複数スタッフでの資料管理も効率的に行えます。
多くの企業がリーガルテックツールの導入を通じて、契約締結までの時間短縮や人的ミスの削減といった成果を上げており、法務業務の大幅な効率化とリスク管理の強化に繋がっています。これらの技術は、弁護士などの専門家が法的サービスを提供する上でも、重要な役割を果たしています。
契約業務効率化の定義
契約業務における効率化とは、時間短縮、コスト削減、リスク軽減を指します。時間短縮については、電子契約サービス「クラウドサイン」の導入により、契約締結までの時間を大幅に短縮することが可能です。最短数分での契約締結が実現し、迅速な業務遂行に貢献します。
コスト削減については、契約書の印刷代や郵送費などの費用を削減できます。また、AIを用いた契約書レビューの導入により、人的ミスを削減し、修正にかかるコストを削減することも可能です。
リスク軽減については、AIを活用して契約リスクを迅速に判定し、修正案を提示するContract Checkサービスを活用することで、契約リスクを管理できます。これらの効率化は、企業の法務部門だけでなく、営業部門や購買部門など、契約に関わる全ての部門にメリットをもたらします。リーガルテックの導入は、契約業務全体の最適化に繋がり、企業の競争力強化に貢献します。
契約書作成・管理におけるリーガルテックの活用
契約書作成と管理において、リーガルテックは業務効率化に大きく貢献します。AI契約レビューや電子契約システムなどの導入効果を検証し、具体的な活用方法を解説します。
AI契約レビューの導入効果
AI契約レビューの導入は、契約書の品質向上と効率化に大きく貢献します。AIは、契約書のリスクを自動で検出し、条項の最適化を支援することで、契約業務を効率化します。
例えば、AI契約書レビューツールを使用すると、参考文献や過去の類似契約書の検索時間を最大50%削減できます。AIは自動的に必要な文書を提示してくれるため、検索や資料の確認時間を大幅に削減可能です。
また、AI契約書レビューを使用することで、契約書のレビュー時間を最大50%削減できます。企業がAIを導入すると、従来の手動レビューに比べて大幅に業務時間を短縮でき、効率が向上します。
さらに、AI契約書レビューを使用すれば、高度な文書検索などのスキル習得が不要になるため、新人の教育コストが大幅に削減されます。株式会社LegalForceが提供するAI契約書レビュー支援ソフトウェア「LegalForce」の導入により、804社以上で業務時間の短縮や書類作成、審査業務効率化を実現しています。
AI契約レビューは、契約書のリスクを自動検出し、条項の最適化を支援することで、契約業務の効率化と品質向上に貢献します。
電子契約システムのメリット
電子契約システムの導入は、コスト削減、時間短縮、セキュリティ向上に大きく貢献します。電子契約サービスは、クラウド上で契約書を交わし、電子署名による同意で契約を締結する仕組みです。
これにより、契約書の印刷代や郵送費がかからないため、経費が削減されます。また、契約締結にかかる時間も大幅に短縮されます。
電子署名は、署名者の身元を特定し、文書の改ざんを防止する技術であり、法的有効性が認められています。中小企業でのAI契約レビュー導入の事例として、東武トップツアーズ株式会社の事例があります。
調査によると、AI契約書レビューの導入率はまだ21.4パーセントに留まる一方で、1年以内の導入予定企業を合わせると約半数が導入する形となり、AI契約書レビューの導入が進んでいます。
電子契約システムは、契約書の印刷代や郵送費を削減し、契約締結にかかる時間を短縮します。また、電子署名の法的有効性により、セキュリティも向上します。
契約書管理システムの効率化
契約書管理システムは、契約書の検索性、アクセス性、保管性を向上させることで、契約業務を効率化します。契約書をデータ化してデータベースに取り込むことで、必要な契約書を迅速に検索し、アクセスすることが可能です。
また、バージョン管理機能により、契約書の変更履歴を追跡し、常に最新のバージョンを把握することができます。アクセス権限設定機能により、契約書へのアクセスを制限し、セキュリティを確保することも重要です。
契約書のデータ化とデータベースへの取り込みにより、効率的な検索や抽出が可能になります。契約書管理システムは、契約書の検索性、アクセス性、保管性を向上させ、契約業務の効率化に貢献します。バージョン管理やアクセス権限設定により、セキュリティも確保されます。
弁護士法72条とリーガルテック:法律業務の範囲
本セクションでは、弁護士法72条の規定とリーガルテックが提供するサービスが抵触しない範囲について解説し、法律相談や法的助言との境界線を明確にします。
弁護士法72条の解釈
弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事務を行うことを禁じています。
この条文は、法律事務の専門性と適正な遂行を担保し、法律サービスの質を維持するために設けられています。条文の解釈にあたっては、過去の判例や学説が重要な指針となります。
判例では、「法律事務」 の範囲が具体的に示されており、法律判断を伴う業務や法律効果を発生させる業務などが該当するとされています。
非弁行為は、弁護士資格を持たない者が法律事務を独占的に行うことを防ぎ、一般消費者を保護することを目的としています。リーガルテックサービスがこの非弁行為に該当するか否かは、サービスの具体的な内容や提供方法によって判断されます。
例えば、単なる情報提供や文書作成の支援にとどまる場合は非弁行為に該当しない可能性がありますが、個別の法律判断や法的助言を行う場合は該当するリスクがあります。
したがって、リーガルテックサービスを提供する際は、弁護士法72条に抵触しないよう、サービスの範囲を明確にすることが重要です。
リーガルテックの法的リスク
リーガルテックの利用には、弁護士法72条に抵触するリスク以外にも、個人情報保護法や著作権法など、様々な法的リスクが存在します。
個人情報保護法に関しては、契約書などの法律文書に記載された個人情報の取り扱いが問題となります。リーガルテックサービスを利用する際は、個人情報の取得、利用、保管、提供等の各段階において、個人情報保護法を遵守する必要があります。
また、著作権法に関しては、契約書や判例などの著作物の利用が問題となります。リーガルテックサービスがこれらの著作物を利用する際は、著作権者の許諾を得るか、著作権法上の例外規定に該当する必要があります。
これらの法的リスクを回避するためには、リーガルテックサービスを提供する事業者自身が、法律に関する専門知識を有していることが望ましいです。
また、弁護士等の専門家と連携し、法的リスクを事前に評価し、適切な対策を講じることが重要です。
さらに、利用規約やプライバシーポリシーを明確化し、利用者に対して十分な情報提供を行うことも、法的リスクの軽減に繋がります。
リーガルテックと弁護士の連携
リーガルテックと弁護士が連携することで、より高度な法的サービスを提供できる可能性が広がります。リーガルテックは、大量の法律情報を効率的に処理し、弁護士の業務をサポートすることができます。
例えば、AIを活用した契約レビューシステムは、弁護士が契約書の内容を迅速かつ正確に把握するのに役立ちます。また、オンライン法律相談プラットフォームは、弁護士がより多くの顧客にアクセスする機会を提供します。
弁護士は、リーガルテックを活用することで、より高度な法律判断や戦略立案に集中することができます。協業モデルとしては、弁護士がリーガルテックサービスの開発に協力したり、リーガルテックサービスを提供する事業者が弁護士を顧問として迎えたりする事例があります。
役割分担としては、リーガルテックが情報収集や文書作成などの定型的な業務を担い、弁護士が法律判断や訴訟対応などの専門的な業務を担うことが考えられます。
このような連携により、法律サービスの効率化と質の向上を両立させることが可能になります。
リーガルテック導入のステップと注意点
リーガルテックを導入する際のステップと注意点について解説します。導入前の準備、ベンダー選定、導入後の運用について説明することで、スムーズな導入を支援します。
導入前の準備
リーガルテック導入を成功させるためには、事前の準備が不可欠です。まず、自社の法務関連業務における課題を明確に把握し、どの業務プロセスを効率化したいのか、具体的な目標を設定します。例えば、契約書の作成、審査、管理にかかる時間やコストを削減したい、訴訟リスクを低減したいなど、定量的な目標を設定することが重要です。
次に、目標達成に必要な機能を洗い出します。電子契約機能、AI契約レビュー機能、法令判例検索機能など、自社の課題解決に最適な機能をリストアップしましょう。スモールスタートを意識し、まずは一部の部門や業務で試験的に導入し、効果を検証することをおすすめします。トライアル期間を活用し、実際の業務でツールを試用することで、導入後のギャップを最小限に抑えることができます。
導入前に、短期的な目標としてコスト削減を設定し、中・長期的な目標として業務効率化による生産性向上を設定しておきましょう。
ベンダー選定のポイント
リーガルテックベンダーの選定は、導入の成否を左右する重要な要素です。複数のベンダーから提案を受け、費用対効果、セキュリティ対策、サポート体制などを比較検討しましょう。
費用対効果を評価する際には、初期費用だけでなく、月額費用、追加機能の費用、サポート費用なども考慮に入れる必要があります。セキュリティ対策については、ISO27001認証の取得状況、データ暗号化の方式、アクセス制御の仕組みなどを確認し、自社のセキュリティポリシーに合致しているかを確認しましょう。サポート体制については、導入時のサポート、運用時のサポート、トラブル発生時の対応などを確認し、自社のITリテラシーに合わせたサポートを受けられるかを確認しましょう。
電子契約サービスを利用する際には、ベンダーが提供するサービスの包括性や、エラーが発生した際の修正作業などを確認することが重要です。導入後も評価基準を設定しておくことが重要です。
導入後の運用と改善
リーガルテック導入後も、効果的な運用と継続的な改善が不可欠です。導入したツールの利用状況を定期的に監視し、効果測定を行いましょう。例えば、契約締結にかかる時間の短縮、コスト削減額、訴訟リスクの低減などを定量的に評価します。
ユーザーへの教育も重要です。ツールの使い方、メリット、注意点などを丁寧に説明し、ユーザーの理解度を高めることで、ツールの利用率向上につながります。システムアップデートにも注意が必要です。ベンダーから提供される最新情報を常に把握し、必要に応じてシステムをアップデートすることで、セキュリティリスクを低減し、最新機能を利用することができます。
他社の事例を参考にすることで、導入から運用までのポイントをより細やかに理解することができます。電子契約サービスのデータ蓄積状況や、ユーザーからのフィードバックを受け取って、不具合などの点を確認し、必要な修正を加えましょう。
事例紹介:リーガルテックによる契約業務効率化
実際にリーガルテックを導入し、契約業務を効率化した企業の事例を紹介し、具体的な導入効果や成功要因を分析します。
中小企業における導入事例
中小企業がリーガルテックを導入し、契約業務を効率化した事例として、AI契約書レビューサービス「り~が~るチェック」の導入が挙げられます。「り~が~るチェック」は月額2万円という価格設定で、弁護士への依頼と比較して大幅なコスト削減を実現します。
契約書の作成からレビュー、翻訳、管理までをサポートし、法務業務全体の効率化に貢献しています。導入効果として、契約書レビュー時間の短縮、人為的ミスの削減、法的リスクの軽減が期待できます。また、経済産業省の「IT導入補助金2020」の対象ツールとして採択されているため、導入コストの一部を補助金で賄えるメリットもあります。
契約書管理クラウドサービスの「リーガレッジ」は、契約業務を「レビュー・締結」「登録・管理」「情報活用」の3つのプロセスに分け、それぞれをDX化することで、契約業務をサイクル化させています。これらのリーガルテックサービスは、中小企業が直面する法務リソースの制約を克服し、迅速かつ正確な契約業務を実現するための有効な手段です。
特に、コスト面でのメリットは大きく、従来の弁護士費用と比較して大幅な経費削減が可能です。さらに、AIを活用したレビュー機能は、人的ミスを減らし、契約内容の精度向上に寄与します。これにより、中小企業は法務部門の負担を軽減し、本業に集中できる環境を構築できます。
大企業における導入事例
大企業におけるリーガルテック導入事例として、株式会社Jリーグの「ContractS CLM」導入が挙げられます。このシステム導入により、契約内容の確認時間が10%から30%短縮される見込みです。また、従来の手作業を省略することで、コスト削減効果も期待されています。
ENEOSホールディングス株式会社では、法務部の規模拡大に対応するため、リーガルテックを活用し、過去の契約内容を容易に確認できる体制を構築しました。これにより、法務業務の効率化とコスト削減に成功しています。
パーソルホールディングス株式会社では、電子契約システム「ContractS CLM」を活用し、契約プロセスの経歴を容易に追跡できるようになりました。これにより、契約審査業務の迅速化が実現し、案件依頼時から一次審査までの時間が67%削減されています。
これらの事例から、大企業におけるリーガルテック導入は、業務効率化だけでなく、コンプライアンス強化やリスク管理の高度化にも貢献することがわかります。特に、契約データの一元管理は、企業全体の法務リスクを低減し、迅速な意思決定を支援します。また、自動化された契約プロセスは、人的資源をより戦略的な業務に集中させることを可能にし、企業全体の競争力向上に繋がります。
今後のリーガルテックの展望
今後のリーガルテックは、AI技術の進化と法改正の動向により、契約業務に大きな変革をもたらすと予想されます。これらの要素が組み合わさることで、企業法務はより効率的かつ戦略的なものへと進化していくでしょう。
AI技術の進化
AI技術の進化は、リーガルテックの未来を大きく左右します。特に、自然言語処理(NLP)と機械学習(ML)の進展は、契約業務の自動化と精度向上に不可欠です。リーガルテック社が提供する「AI孔明」のように、大規模言語モデル(LLM)を活用したAIは、契約書のレビュー、要約、作成を効率化し、デューデリジェンスの精度を高めます。
AIの進化により、契約リスクの早期発見やコンプライアンスチェックの自動化が進み、法務担当者はより戦略的な業務に集中できるようになります。例えば、AIが過去の判例や類似契約書を分析し、契約条項のリスクを評価することで、契約交渉の初期段階で潜在的な問題を特定できます。
また、AIは契約書の自動生成や修正提案も可能にし、契約業務の迅速化とコスト削減に貢献します。将来的には、AIが法改正や業界動向をリアルタイムで学習し、契約書の内容を自動的にアップデートする機能も期待されます。
これにより、企業は常に最新の法規制に準拠した契約を維持できるようになり、コンプライアンスリスクを最小限に抑えることができます。さらに、AIは契約データの分析を通じて、契約パフォーマンスの最適化やビジネス戦略の策定を支援します。
例えば、AIが過去の契約データを分析し、成功事例や改善点を特定することで、より効果的な契約戦略を立案できます。このように、AI技術の進化は、リーガルテックを単なる業務効率化ツールから、企業の競争力を高める戦略的パートナーへと進化させるでしょう。
法改正の動向
法改正の動向は、リーガルテックの普及と進化に大きな影響を与えます。特に、電子署名法や個人情報保護法の改正は、リーガルテックの利用環境を大きく変える可能性があります。
電子署名法の改正により、電子契約の法的有効性が明確化されれば、企業は安心して電子契約を導入できるようになります。これにより、契約業務のデジタル化が加速し、紙ベースの契約書管理から脱却する企業が増えるでしょう。
また、個人情報保護法の改正は、リーガルテックのデータ管理とセキュリティ対策に新たな要件を課す可能性があります。企業は、改正法に対応するために、より高度なデータ保護技術やプライバシー管理体制を導入する必要が生じます。
例えば、EUの一般データ保護規則(GDPR)のような厳格なデータ保護規制が導入されれば、リーガルテックベンダーは、データローカリゼーションやデータ暗号化などの対策を講じる必要が生じます。
さらに、法改正は、リーガルテックの新たなビジネスチャンスを創出する可能性もあります。例えば、改正法に対応するためのコンプライアンスソリューションや、データ保護を支援するセキュリティツールなど、新たなリーガルテック製品やサービスが開発されるでしょう。
GVA TECHが公開した「企業の法務DXを後押しするリーガルテックカオスマップ2025」や、トムソン・ロイターと中央法律研究所が協力して提供するリソースは、法改正の最新動向を把握し、適切な対応策を講じる上で非常に役立ちます。これらのリソースを活用することで、企業は法改正に迅速に対応し、リーガルテックの導入効果を最大化することができます。
おわりに
リーガルテックの導入は、契約業務の効率化、コスト削減、リスク管理の強化に不可欠です。しかし、自社に最適なサービスを見つけるのは容易ではありません。
Hakky Handbookでは、ユーザーインタビューを通じて法務担当者の課題やニーズを深く理解し、最適なリーガルテックサービスを選定するための情報を提供しています。最新情報をメールマガジンで配信していますので、ぜひご登録ください。

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