
記事のポイント
- 正規化はデータ重複を削減し、整合性を高め、医療ミスのリスク低減や顧客対応迅速化に貢献します。
- 第一正規形(1NF)は原子性の確保と繰り返しグループ排除が重要。検索効率と整合性維持に貢献します。
- 正規化はデータ保全に貢献する一方、過度な正規化は性能低下を招くため、バランスが重要です。
はじめに
データベース設計は、データの整合性と効率的なアクセスを実現するための重要なプロセスです。原則として、正規化はデータの冗長性を排除し、一貫性を維持するために不可欠です。
適切な属性と関係の設定は、データの整合性を確保し、効率的なデータアクセスを可能にします。また、非スカラ値の適切な扱いも、データベースの設計において考慮すべき重要な要素です。
本記事では、これらの基本原則について詳しく解説します。
データベース設計における正規化の重要性
データベース設計において正規化は、データの整合性を高め、管理を効率化するための重要な原則です。非効率な設計は、データ冗長性や不整合を引き起こし、システムの信頼性を損なう可能性があります。
データ冗長性の排除
正規化は、データベース内のデータ重複を削減し、記憶容量の節約とデータ管理の効率化に貢献します。データが重複していると、更新時に不整合が生じるリスクが高まります。
例えば、顧客情報が複数のテーブルに分散して保存されている場合、住所変更があった際にすべてのテーブルを更新する必要があります。この際、一部のテーブルの更新が漏れると、データ間に矛盾が生じます。このような更新異常を防ぐためには、正規化を行い、データを一元管理することが効果的です。
正規化によって、データの重複を排除し、一箇所を更新するだけで関連するすべてのデータが整合性を保つことができます。医療データベースを例に挙げると、患者の基本情報、病歴、治療記録などが複数のテーブルに分散している場合、正規化によってこれらの情報を整理し、一元的に管理することで、医療ミスのリスクを低減できます。
具体的には、患者IDをキーとして各テーブルを関連付け、必要な情報を効率的に検索できるように設計します。これにより、医師は患者の全体像を迅速に把握し、適切な判断を下すことができます。
データ整合性の維持
正規化は、データベースにおけるデータの一貫性を確保するために不可欠です。データ整合性が損なわれると、誤った情報に基づいて意思決定が行われる可能性があり、業務に支障をきたすことがあります。
例えば、製品の在庫情報が複数のテーブルに分散している場合、あるテーブルでの在庫更新が別のテーブルに反映されないと、実際の在庫数とデータベース上の在庫数に差異が生じます。このような整合性違反を防ぐためには、正規化を行い、データの一元管理を徹底することが重要です。
正規化によって、データの更新が一箇所に集中し、関連するすべてのデータが自動的に更新されるため、整合性を維持できます。具体的には、製品IDをキーとして各テーブルを関連付け、在庫数の変更があった際には、関連するすべてのテーブルが同時に更新されるように設計します。
これにより、常に正確な在庫情報を把握し、適切な発注量を決定することができます。また、正規化はデータの品質向上にも貢献します。データの重複を排除し、一貫性のある形式でデータを管理することで、データの誤りや不整合を早期に発見し、修正することができます。
効率的なデータ管理
正規化は、データベースの検索と更新の効率を高め、データ管理を容易にします。正規化されたデータベースでは、データが整理され、必要な情報に迅速にアクセスできます。
例えば、顧客情報が複数のテーブルに分散している場合、正規化によってこれらの情報を整理し、顧客IDをキーとして各テーブルを関連付けることで、顧客の氏名、住所、購入履歴などの情報を効率的に検索できます。これにより、顧客対応の迅速化やマーケティング戦略の最適化に貢献できます。
また、正規化はデータの更新作業も効率化します。データが重複している場合、更新時に複数の箇所を修正する必要がありますが、正規化によって更新箇所が一箇所に集中するため、更新作業の手間を削減できます。
ただし、正規化はパフォーマンスに影響を与える可能性もあります。正規化されたデータベースでは、複数のテーブルを結合して情報を取得する必要があるため、結合処理の負荷が高くなることがあります。
特に、大規模なデータベースでは、結合処理がボトルネックとなり、検索速度が低下する可能性があります。したがって、正規化を行う際には、パフォーマンスへの影響を考慮し、適切なレベルで正規化を行うことが重要です。
正規化 | メリット | デメリット |
---|
行う場合 | データの整合性の向上 データ管理の効率化 医療ミスのリスク低減 顧客対応の迅速化 マーケティング戦略の最適化 | パフォーマンスに影響を与える可能性 |
行わない場合 | データ冗長性や不整合が発生 システムの信頼性を損なう可能性 業務に支障をきたす可能性 | |
第一正規形(1NF)の徹底解説
第一正規形(1NF)は、データベース設計における正規化の最初のステップとして、データの整合性と効率性を確保するために重要です。ここでは、1NFの定義と適用方法、そしてそれを満たすための具体的な手順を解説します。
原子性の確保
第一正規形(1NF)における原子性の確保とは、データベースの各カラムに単一の値を格納する原則を指します。この原則を遵守することで、データの整合性と検索効率が向上します。
例えば、ある顧客テーブルにおいて、住所カラムに「東京都渋谷区1-1-1」という完全な住所を格納するのではなく、「都道府県」「市区町村」「番地」といったより小さな単位に分割して格納します。これにより、特定の市区町村に住む顧客を検索する際に、より効率的なクエリの実行が可能になります。
また、電話番号を格納する際にも、市外局番、市内局番、加入者番号を別々のカラムに分割することで、特定の市外局番を持つ顧客の抽出が容易になります。
具体的には、顧客テーブルに「氏名」「都道府県」「市区町村」「番地」「電話番号(市外局番)」「電話番号(市内局番)」「電話番号(加入者番号)」といったカラムを設けることが考えられます。
このような設計により、各カラムが単一のアトミックな値を持つため、1NFの要件を満たすことができます。非原子的な値を持つカラムは、データの検索、ソート、集計などの操作を複雑にし、パフォーマンスの低下を招く可能性があります。
したがって、データベース設計においては、各カラムが原子的な値を持つように注意深く設計することが重要です。
繰り返しグループの排除
第一正規形(1NF)における繰り返しグループの排除とは、テーブル内で同じ種類のデータが複数のカラムに繰り返し現れる状態を解消することを意味します。
例えば、ある注文テーブルに「商品名1」「商品名2」「商品名3」といったカラムが存在する場合、これは繰り返しグループに該当します。このような構造は、新しい商品を追加する際にテーブルの構造を変更する必要が生じるため、柔軟性に欠けます。
繰り返しグループを排除するためには、テーブルを分割し、新しいテーブルを作成することが効果的です。
具体的には、注文テーブルと注文明細テーブルを作成し、注文明細テーブルに「注文ID」「商品名」「数量」といったカラムを持たせます。これにより、1つの注文に複数の商品が含まれる場合でも、注文明細テーブルに複数の行を追加することで対応できます。
例えば、注文テーブルには「注文ID」「顧客ID」「注文日」といった情報を格納し、注文明細テーブルには「注文ID」「商品ID」「数量」「単価」といった情報を格納します。
これにより、注文に関する情報を効率的に管理し、データの整合性を維持することができます。繰り返しグループの排除は、データベースの柔軟性と拡張性を高める上で重要なステップです。
このような設計により、データの追加、変更、削除が容易になり、データベースの保守性が向上します。
テーブル | カラム |
---|
顧客テーブル(原子性の確保の例) | 氏名 都道府県 市区町村 番地 電話番号(市外局番) 電話番号(市内局番) 電話番号(加入者番号) |
注文テーブル(繰り返しグループ排除の例) | 注文ID 顧客ID 注文日 |
注文明細テーブル(繰り返しグループ排除の例) | 注文ID 商品ID 数量 単価 |
第二正規形(2NF)と第三正規形(3NF)
データベース設計において、第二正規形(2NF)と第三正規形(3NF)は、データの一貫性と効率性を高めるために重要な概念です。
部分的関数従属の除去(2NF)
第二正規形(2NF)は、第一正規形(1NF)を満たすテーブルから、主キーの一部にのみ依存する属性(部分的関数従属)を除去することを目指します。
例えば、発注テーブルにおいて、発注IDと商品IDが主キーである場合、商品名が商品IDにのみ依存していると、これは部分的関数従属に該当します。
この問題を解決するためには、商品情報テーブルを新たに作成し、商品IDと商品名をこのテーブルに分離します。
元の発注テーブルには、発注ID、商品ID、発注数量などの情報のみを残します。
これにより、発注テーブルは発注IDと商品IDの組み合わせに完全関数従属するようになり、データの冗長性が排除されます。
具体的には、商品情報テーブルには、商品ID、商品名、単価などの情報を含めることができます。
一方、発注テーブルには、発注ID、商品ID、発注日、発注数量などの情報を含めます。
このようにテーブルを分割することで、データの更新が容易になり、整合性が向上します。
推移的関数従属の除去(3NF)
第三正規形(3NF)は、第二正規形(2NF)を満たすテーブルから、主キー以外の属性に依存する属性(推移的関数従属)を除去します。
例えば、従業員テーブルにおいて、従業員IDが主キーであり、部署IDと部署名が記録されているとします。
この場合、部署名は部署IDに依存しており、従業員IDを介して間接的に依存しているため、推移的関数従属が存在します。
この問題を解決するためには、部署テーブルを新たに作成し、部署IDと部署名をこのテーブルに分離します。
元の従業員テーブルには、従業員ID、従業員名、部署IDなどの情報のみを残します。
これにより、従業員テーブルは従業員IDに直接依存する属性のみを持つようになり、データの冗長性が排除されます。
具体的には、部署テーブルには、部署ID、部署名、所在地などの情報を含めることができます。
一方、従業員テーブルには、従業員ID、従業員名、部署ID、役職などの情報を含めます。
このようにテーブルを分割することで、データの更新が容易になり、整合性が向上します。
正規化のトレードオフ
正規化はデータベース設計においてデータの冗長性を削減し、一貫性を保つ上で重要ですが、過度な正規化は設計の複雑性を増し、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
正規化のメリットとしては、データの重複を避けることでストレージ容量を節約し、データの整合性を高めることができます。
例えば、顧客情報が複数のテーブルに分散している場合、顧客の住所変更があった際に、関連する全てのテーブルで更新を行う必要がありますが、正規化されたデータベースでは、1つのテーブルの更新で済みます。
一方、デメリットとしては、複数のテーブルにデータが分散されるため、データの取得に複数のテーブルを結合する必要が生じ、クエリの実行速度が低下する可能性があります。
また、テーブル数が増えることで、データベースの設計や管理が複雑になることも考慮すべき点です。
したがって、正規化を行う際には、データの整合性とパフォーマンスのバランスを考慮し、適切なレベルで正規化を適用することが重要です。
メリット | デメリット |
---|
データの重複を避けることでストレージ容量を節約 | データの取得に複数のテーブルを結合する必要が生じ、クエリの実行速度が低下する可能性 |
データの整合性を高める | テーブル数が増えることで、データベースの設計や管理が複雑になる |
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適切な属性と関係の設定
データベース設計において、適切な属性の選択と関係の定義は、データの整合性と検索効率を確保するために重要です。本セクションでは、属性の選択、関係の定義、参照整合性の維持に関するベストプラクティスについて解説します。
属性の選択
属性の選択は、データベース設計の基盤となる重要なプロセスです。適切な属性を選択することで、データの整合性を高め、効率的なデータ管理を実現できます。ここでは、適切な属性の選定基準と属性名の命名規則について解説します。
属性とは、特定のデータの特性を記述するための列を指します。たとえば、users
テーブルの場合、属性はユーザー名、メールアドレス、生年月日などです。適切な属性設定はデータの整合性と検索の効率性に大きく影響を与えます。
users
テーブルの属性例として、id
(INT PRIMARY KEY)、username
(VARCHAR(50) NOT NULL)、email
(VARCHAR(100) NOT NULL)、date_of_birth
(DATE)、created_at
(TIMESTAMP DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP)が挙げられます。
属性名の命名規則は、一貫性を保つために重要です。例えば、すべての属性名を小文字で統一し、複数の単語を組み合わせる場合はアンダースコアで区切るなどのルールを設けることが効果的です。
また、属性名はその内容を明確に表すように命名することが重要です。例えば、ユーザーの作成日時はcreated_at
、最終更新日時はupdated_at
のように命名することで、属性の意図が明確になります。
関係の定義
テーブル間の関係を適切に定義することは、データベースの整合性を保ち、効率的なデータ操作を実現するために不可欠です。ここでは、テーブル間の関係の種類と外部キーの設定について解説します。
関係とは、2つのテーブル間で結びつく方式を指します。テーブル間の関係には、以下の3種類があります。
- 1対1の関係:一方のテーブルのレコードが他方のテーブルの1つのレコードにのみ関連付けられる場合に使用します。例えば、ユーザーテーブルとプロファイルテーブルの関係がこれに該当します。
- 1対多の関係:一方のテーブルのレコードが他方のテーブルの複数のレコードに関連付けられる場合に使用します。例えば、顧客テーブルと注文テーブルの関係がこれに該当します。
- 多対多の関係:一方のテーブルのレコードが他方のテーブルの複数のレコードに関連付けられ、かつその逆も成り立つ場合に使用します。例えば、学生テーブルとコーステーブルの関係がこれに該当します。
外部キーは、テーブル間の関係を定義するために使用される属性です。外部キーは、あるテーブルの属性が別のテーブルの主キーを参照するように設定します。例えば、orders
テーブルのcustomer_id
属性がcustomers
テーブルのid
属性を参照する場合、customer_id
は外部キーとなります。
参照整合性の維持
参照整合性を維持することは、データベースの信頼性を高める上で非常に重要です。ここでは、外部キー制約の設定と孤立レコードの防止について解説します。
参照整合性とは、データベース内のテーブル間の関係が常に一貫性を保つようにするための制約です。外部キー制約を設定することで、参照整合性を維持することができます。
外部キー制約は、外部キーがあるテーブルに存在しない値を入力することを防ぎます。例えば、orders
テーブルのcustomer_id
属性がcustomers
テーブルのid
属性を参照している場合、orders
テーブルに存在しないcustomer_id
を入力しようとすると、外部キー制約によってエラーが発生します。
孤立レコードとは、関連するレコードが存在しないレコードのことです。例えば、customers
テーブルから削除されたid
を持つcustomer_id
がorders
テーブルに残っている場合、そのorders
テーブルのレコードは孤立レコードとなります。
孤立レコードを防止するためには、外部キー制約を設定する際に、ON DELETE CASCADE
オプションを使用することが効果的です。このオプションを設定すると、参照元のレコードが削除された際に、参照先のレコードも自動的に削除されます。
非スカラ値の扱いと代替案
データベース設計における非スカラ値の扱いは、システムの効率と整合性に大きく影響します。ここでは、非スカラ値の問題点を明確にし、その代替案として関連テーブルの利用とJSON形式の利用について解説します。
非スカラ値の問題点
非スカラ値とは、一つのカラムに複数の値を格納する設計であり、データベースの効率と整合性に悪影響を及ぼします。例えば、電話番号をカンマ区切りで一つのカラムに格納するケースが該当します。このような設計は、検索効率の低下とデータ整合性の問題を引き起こす可能性があります。
まず、検索効率の低下についてですが、特定の電話番号を検索する際に、LIKE句などの文字列操作が必要となり、インデックスが効果的に利用できません。これにより、テーブル全体をスキャンする必要が生じ、大規模なデータベースではパフォーマンスが著しく低下します。
次に、データ整合性の問題ですが、非スカラ値はデータの更新や削除を困難にします。例えば、ある電話番号を削除する場合、文字列操作で削除する必要があり、誤って他の電話番号まで削除してしまうリスクがあります。また、新しい電話番号を追加する場合も、既存の文字列に追記する必要があり、操作ミスが発生しやすいです。
さらに、非スカラ値はデータベースの正規化原則に違反します。正規化とは、データの冗長性を排除し、データの整合性を維持するための設計原則です。非スカラ値は、一つのカラムに複数の情報を含んでいるため、正規化の第一正規形(1NF)に違反します。したがって、非スカラ値の使用は避け、代替案を検討することが重要です。
代替案:関連テーブルの利用
非スカラ値の代替案として、関連テーブルの利用は非常に効果的です。関連テーブルとは、非スカラ値を分割し、別のテーブルに格納することで、データの正規化を実現する手法です。例えば、ユーザーテーブルに電話番号を格納する場合、電話番号テーブルを作成し、ユーザーIDを外部キーとして関連付けます。
これにより、一つのユーザーが複数の電話番号を持つことができ、かつデータの冗長性を排除できます。関連テーブルの利用は、多対多関係の表現にも適しています。例えば、学生とコースの関係を表現する場合、学生テーブル、コーステーブル、そして学生とコースの関連テーブルを作成します。
関連テーブルには、学生IDとコースIDを格納し、それぞれの関係を表現します。これにより、学生は複数のコースを履修でき、コースも複数の学生が履修できます。
関連テーブルを利用するメリットは、データの整合性を維持できることです。電話番号やコース名などの情報を一箇所で管理できるため、更新や削除が容易になり、データの不整合を防ぐことができます。また、関連テーブルはインデックスの利用を促進し、検索パフォーマンスを向上させます。電話番号やコース名で検索する場合、それぞれのテーブルにインデックスを作成することで、高速な検索が可能です。
したがって、非スカラ値を使用する代わりに、関連テーブルを利用することで、データの整合性と検索効率を向上させることができます。
代替案:JSON形式の利用
非スカラ値のもう一つの代替案として、JSON形式の利用があります。JSON形式とは、JavaScript Object Notationの略で、構造化されたデータを表現するための軽量なデータ形式です。JSON形式を利用することで、複雑なデータを一つのカラムに格納することができます。
例えば、ユーザーの住所情報をJSON形式で格納する場合、郵便番号、都道府県、市区町村、番地などの情報をまとめて格納できます。JSON形式のメリットは、柔軟なデータ構造を表現できることです。住所情報のように、複数の属性を持つデータを一つのカラムに格納できるため、テーブル設計がシンプルになります。また、JSON形式は多くのプログラミング言語でサポートされており、データの操作が容易です。
一方、JSON形式のデメリットは、検索効率が低下する可能性があることです。JSON形式で格納されたデータに対して、部分的な検索を行う場合、データベースの機能によっては効率的なインデックスが利用できません。また、JSON形式のデータは、データの整合性を維持するための制約を定義することが難しい場合があります。
したがって、JSON形式を利用する場合は、データの構造や検索要件を十分に検討する必要があります。JSON形式は、データの柔軟性が求められる場合や、検索頻度が低い場合に効果的です。例えば、ログデータや設定情報など、構造が変化しやすいデータを格納する場合に適しています。
正規化と非スカラ値のバランス
データベース設計では、正規化と非スカラ値の利用において、パフォーマンスと保守性のバランスを考慮することが原則として重要です。
パフォーマンスの考慮
正規化を進めることでテーブルが細分化され、必要な情報を得るためには複数のテーブルを結合する処理が増加します。この結合処理は、データベースのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。特に、大規模なデータベースや複雑なクエリを実行する場合には、その影響が顕著になることがあります。
そのため、正規化を行う際には、結合処理のオーバーヘッドを最小限に抑えるための対策が重要です。インデックスの最適化は、そのための効果的な手段の一つです。適切なインデックスを設計することで、データベースは特定のカラムを基準にデータを迅速に検索できるようになり、結合処理の速度を大幅に向上させることが可能です。
例えば、結合条件として頻繁に使用されるカラムには、必ずインデックスを設定することを検討すべきです。また、クエリの実行計画を分析し、インデックスが効果的に使用されているかを確認することも重要です。インデックスが適切に機能していない場合は、インデックスの再構築やクエリの書き換えを検討する必要があります。
さらに、データベースの統計情報を定期的に更新することで、クエリオプティマイザがより効率的な実行計画を選択できるようになり、パフォーマンスの向上が期待できます。インデックス設計、クエリの最適化、統計情報の更新は、正規化されたデータベースにおいてパフォーマンスを維持するために不可欠な要素です。
保守性の考慮
正規化を進めることで、データベースのテーブル数は増加し、設計が複雑化する傾向があります。テーブル間の関係性が複雑になると、データベースの構造全体を把握することが難しくなり、変更や修正を行う際に予期せぬ影響が生じるリスクが高まります。
そのため、正規化を行う際には、データベースの保守性を維持するための対策を講じることが重要です。設計ドキュメントの作成は、そのための効果的な手段の一つです。設計ドキュメントには、各テーブルの構造、カラムの定義、テーブル間の関係性などを詳細に記述します。これにより、データベースの構造全体を可視化し、関係者間で共通認識を持つことができます。
また、設計ドキュメントは、データベースの変更履歴や設計意図を記録する役割も果たします。これにより、将来的な変更や修正を行う際に、過去の経緯を参考にしながら、より安全かつ効率的に作業を進めることが可能です。設計ドキュメントは常に最新の状態に保ち、関係者間で共有することが重要です。
さらに、データベースの設計原則や命名規則を明確に定義し、それを遵守することも、保守性を高める上で効果的です。一貫性のある設計原則と命名規則は、データベースの構造を理解しやすくし、変更や修正時の混乱を避けることができます。
ケーススタディ
ECサイトのデータベース設計を例に、正規化と非スカラ値のバランスについて考察します。商品テーブル、顧客テーブル、注文テーブルを基本とし、商品のカテゴリや属性をどのように管理するかが課題となります。
カテゴリは、商品テーブルに直接カテゴリIDを持たせる方法と、カテゴリテーブルを作成してリレーションを張る方法があります。属性については、商品ごとに異なる属性を持つ場合、非スカラ値(JSON形式など)で属性を格納する方法と、属性テーブルを作成してリレーションを張る方法が考えられます。
パフォーマンスを重視する場合は、カテゴリIDを直接商品テーブルに持たせ、属性をJSON形式で格納することが考えられます。これにより、結合処理を減らし、クエリの実行速度を向上させることができます。ただし、この場合、カテゴリの変更や属性の検索が困難になる可能性があります。
保守性を重視する場合は、カテゴリテーブルと属性テーブルを作成し、商品テーブルとリレーションを張ることが考えられます。これにより、カテゴリの変更や属性の検索が容易になり、データベースの構造を理解しやすくなります。ただし、この場合、結合処理が増加し、クエリの実行速度が低下する可能性があります。
最適なバランスは、ECサイトの規模や要件によって異なります。小規模なECサイトであれば、パフォーマンスを重視した設計が適しているかもしれません。大規模なECサイトであれば、保守性を重視した設計が適しているかもしれません。重要なのは、パフォーマンスと保守性のトレードオフを理解し、自社の要件に最適なバランスを見つけることです。
おわりに
データベース設計の原則を理解し、適切な正規化を行うことは、効率的で整合性の取れたデータ管理に不可欠です。しかし、過度な正規化はパフォーマンスに影響を与える可能性もあります。
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