実例解説：ChatGPTの応答品質を向上させるプロンプトエンジニアリングのコツ

はじめに

AI の進化は止まらないもので、その中でも話題の AI 技術「ChatGPT」をご存知でしょうか。今回の記事では、ChatGPT を学習させてより利便性を高める方法を解説していきます。

ChatGPT とプロンプトエンジニアリングの関係

AI 技術の進歩によって、私たちの生活や仕事に大きな変化がもたらされています。

ChatGPT もその一つで、コミュニケーションの効率化や問題解決の手助けをする役割を担っています。

ChatGPT を効果的に活用するための考え方のひとつに「プロンプトエンジニアリング」というものがあります。

本記事ではこのアプローチについて具体的な事例やコツをご紹介します。

プロンプトエンジニアリングとは何かについてはこちらの記事でも解説していますので、併せてご覧ください。

• Hakky | プロンプトエンジニアリングとは【ビジネスパーソンが知るべき ChatGPT の活用術】

では、どのようにしてこの手法が ChatGPT の応答の質を向上させる役割を果たすのでしょうか。

ChatGPT は、言語理解技術の一つであるトランスフォーマーという仕組みをベースにしています。

トランスフォーマーは、文章の中の単語やフレーズがどのように関連しているかを把握し、文脈を理解するための技術です。

この仕組みは、文章データを効率的に処理し、文脈を理解できるように設計されています。

プロンプトエンジニアリングは、質問の仕方や指示の出し方を工夫することで、ChatGPT からより適切な回答を得ることができます。

次の章では、具体的な手法やアプローチについて解説していきます。

ChatGPT プロンプトエンジニアリングのコツ

ChatGPT は非常に強力な AI ですが、満足のいく回答を引き出すためには、質問や指示の出し方を工夫することが重要です。

ここでは、どのようなプロンプトを与えて期待する返答に近づくか、具体的なポイントを解説します。

明確な指示を与える

AI は指示に従って動くため、具体的で明確な指示を与えることが大切です。

質問や依頼がはっきりしているほど、期待に沿った適切な回答が得られやすくなります。

• 良い例：「東京の観光スポットを 3 つ教えてください」
• 悪い例：「何か面白いところ教えて」

「悪い例」では、「面白いところ」というリクエストが「おすすめの場所」を指すものと意図を汲み取って複数のアイデアを示してくれていますが、質問者が何を以って「面白い」と感じるのかや具体的にどのような回答を期待しているのかを反映できている状況ではありません。

一方「良い例」では、「東京の観光スポット」「3 つ」と、何についての情報なのか、どの程度の情報量を求めているのかが明確であり、ChatGPT もそれに合った回答を出してくれています。

シンプルな言葉で質問する

ChatGPT は複雑な文章や専門用語を理解する能力がありますが、複雑な表現や専門用語よりも、シンプルな言葉での質問や依頼をした方が正確でわかりやすい回答を得やすくなります。

• 良い例：「コーヒーの淹れ方を教えてください。」
• 悪い例：「最適なコーヒー抽出法について詳細を述べよ。」

コーヒーの抽出方法に関するテクニカルな内容を求めている状況であれば後者も有益な情報となりますが、「コーヒーを淹れたい」というのが質問の意図なのであれば、そのま平易な表現で質問したほうがわかりやすい回答を得られます。

質問の焦点を絞る

ChatGPT に質問する際、複数のトピックが含まれると、AI がどのトピックに焦点を当てるべきか判断しきれないことがあります。

そのため、一度に一つのトピックに絞って質問をすることが効果的です。

• 良い例：「自転車の交通事故に関する法律について教えてください」
• 悪い例：「ChatGPT は法律相談に対応できますか？」

質問したい内容が定まっているのであれば「～はできますか？」のような問いよりも、「～について教えてください」のように出力してほしい事柄に焦点を絞った問いの方が、求める情報にたどり着きやすいでしょう。

繰り返しや改善を用いて回答の精度を上げる

ChatGPT が提供した回答が不十分である場合、繰り返し質問をしたり、条件や背景を追加情報として伝えるといった改善をすることで、回答の精度を上げることができます。

• 例：「首都は？」→「タイの首都は？」→「タイの首都の正式名称は？」

1 度目の質問では「どの国の首都について尋ねているのか」が不明確であり、ChatGPT にも指摘されているように、これだけでは的確な回答を引き出すことができません。

2 度目の質問のように改善することで、求める回答を引き出すようにしましょう。

さらに詳しい情報や追加の知識を得たい場合は、3 番目の質問のように深掘りすることを検討してみてください。

複数の質問で情報を引き出す

一度にすべての情報を得ようとするのではなく、複数の質問を通じて情報を引き出すアプローチも効果的です。

段階的に質問を深めることで、より詳細な回答を得ることができます。

• 例：「日本の人気観光地はどこですか？」 → 「京都にはどんな観光地がありますか？」 → 「清水寺の見どころを具体的に教えてください。」

「やってほしいこと」を伝える

出すべき回答を ChatGPT が適切に出せるようにするためのもう一つの工夫は、「やらないでほしいこと」よりも「やってほしいこと」を指示することです。

• 良い例：トマトの種類を 4 つ挙げてください。
• 悪い例：トマトの種類を教えてください。5 個以上は挙げないでください。

後者の「5 個以上は挙げないでください（＝挙げる種類数は 4 個以下にしてください）」というプロンプトでは ChatGPT がその意図を適切にくみ取れなかったことがわかります。

極端な例ではありますが、前者「～を 4 つ挙げてください」のように肯定文で直接的に指示を出す方が望ましい結果を得られやすいです。

これらの方法を活用することで、ChatGPT の学習効果を最大限に引き出し、より有益な回答を得られるようになります。

質問や依頼を工夫するだけで、ChatGPT とのコミュニケーションがスムーズになり、満足度が向上するでしょう。

ChatGPT プロンプトエンジニアリングのメリット

プロンプトを工夫することで得られるメリットは以下のようになります。

タスクの効率化

適切なプロンプトを与えられた ChatGPT は、日常業務のサポートから研究や創作活動におけるアイデアの提供、さらには外国語の翻訳やプログラムのコード生成など、幅広いタスクを効率的にこなすことができるようになります。

これにより、人間の作業負担が軽減され、時間を有効に活用できるようになります。

質の高い回答の獲得

効果的なプロンプトを用いて指示を出すことで、ChatGPT はユーザーの質問に対してより正確で適切な回答を提供することができるようになります。

これにより、信頼性の高い情報や助言を得ることが可能になり、求めている知識やサポートが手に入りやすくなります。

ユーモアや人間味のあるコミュニケーション

プロンプト次第で ChatGPT は、単なる情報提供だけでなく、ユーモアや人間味のある会話も楽しむことができます。

例えば、雑談やクイズゲームなど、エンターテイメント性の高いコンテンツを提供することが可能です。

この特長を活かすことで、ChatGPT とのコミュニケーションを通じたストレス解消や醍醐味を味わうことができます。

ユーザー体験のカスタマイズ

プロンプトエンジニアリングにより ChatGPT を学習させることで、ユーザー自身の需要や興味、好みに応じて合わせたカスタマイズされたユーザー体験を得ることができます。

特に、特定の業界や専門分野に関する知識を深めたりする際などにこのメリットを実感することでしょう。

これらのメリットを十分に享受するためには、効果的なプロンプトを模索しつつ ChatGPT とのコミュニケーションを継続的に行うことが大切です。

目的や状況に応じたプロンプトを用いることで、ChatGPT はユーザーのニーズに応じたサポートを提供できるよう微調整を重ね、日常生活やビジネス活動において役立つ情報やアイデアを提供できるようになります。

また、ユーモアや人間味のある会話も楽しむことができるため、単なる情報提供ツールとしてだけではなく、心の支えとなる存在としても活用することができます。

このように、適切なプロンプトを与えられた ChatGPT は、ユーザーにとって大変有益な存在となるのです。

面白い使い方やプロンプトの工夫

ChatGPT は、単に情報を提供するだけでなく、前提条件や制約の設け方によっては面白みのある用途にも活用することができます。

詩や物語の創作

ChatGPT に詩や物語の題材を与えることで、独自の作品を創作させることができます。

作品の登場人物や設定を決め、それに基づいてストーリーを展開させることも可能です。

• 例：夏目漱石の「吾輩は猫である」のパロディー「吾輩は女王蜂である」という物語を作ってもらいました。

多言語対応

ChatGPT は複数の言語を学習しているため、言語学習のサポートとして活用することができます。

例えば、母国語で話しかけた内容を別の言語に翻訳してもらったり、外国語での会話練習を行ったりすることができます。

• 例：前項で作ってもらった「吾輩は女王蜂である」を英訳してもらいました。

クイズの出題

ChatGPT にクイズを出題して回答をもらうだけでなく、逆に ChatGPT にクイズを作成させることもできます。

友人や家族と一緒に楽しむ際のお題作成係を ChatGPT に委ねるといった使い方も取り入れる価値がありそうです。

• 例：簡単な英語のクイズを 3 つ出題してもらいました。

回答をすると、正解か不正解かを教えてくれます。顔文字を使ってみたところ ChatGPT も顔文字で返信をくれました。人間味のあるコミュニケーションですね。

ユーモアあふれる会話

ChatGPT は、ユーモアや皮肉を理解する能力も持っています。

そのため、面白いジョークや言い回しを教えることで、より人間味のある会話を楽しむことができます。

• 例：「4 月の社会人の胸に響きそうなブラックジョーク」を頼んでみました。……ChatGPT は日本の社会をよく理解していますね。

これらのように創造的な利用方法を見出せると、ChatGPT とのコミュニケーションがより楽しく充実したものになるでしょう。

ただし、ChatGPT の活躍幅を広げるには、適切なフィードバックや繰り返しのコミュニケーションが重要です。

新しいアイデアや方法を試し続けることで ChatGPT との建設的な関係を築いていくことができます。

よくある質問と解決策

この章では、ChatGPT のプロンプトエンジニアリングに関してよくある質問や問題に対する解決策をご紹介します。

• Q1: ChatGPT が理解しきれない専門用語や固有名詞がある場合はどうすればいいですか？
  • A1：専門用語や固有名詞を具体的に説明してみましょう。繰り返し同じ単語やフレーズを使うことで、徐々に理解力を向上させることができます。
• Q2: ChatGPT がうまく答えられない質問がある場合、どのように対処すればよいですか？
  • A2：質問の言い回しを変えてみたり、より具体的な情報を与えることで、ChatGPT が適切な回答を出せるようになることがあります。また、質問を複数の部分に分けて、それぞれに対する回答を得ることも効果的です。
• Q3: ChatGPT に特定の分野での専門知識を教える方法はありますか？
  • A3：特定の分野での専門知識を習得させるには、その分野に関する具体的な質問や情報を提供することが効果的です。また、専門家やリーダーが発信する情報や文献を参照させることで、より深い理解を促すことができます。
• Q4: ChatGPT が出力する文章の長さを調整する方法はありますか？
  • A4：文章の長さを調整するには、質問や指示を具体的にすることが効果的です。例えば、「短い文章で答えてください」と指定することで、ChatGPT は要点を絞った回答を提供するようになります。
• Q5: ChatGPT が不適切な内容を出力した場合、どのように対処すればよいですか？
  • A5：まずは、ChatGPT に不適切な内容を出力しないように指示を与えましょう。「不適切な言葉を使わずに答えてください」といったリクエストを行うことで、改善されることがあります。それでも問題が解決しない場合は、質問の言い回しを変えてみましょう。
• Q6: ChatGPT が私の意図を正確に理解していない場合、どのように対処すればよいですか？
  • A6：まず、質問や指示をより明確にして、意図を具体的に伝えることが重要です。また、意図が伝わりにくい場合は、質問を複数の部分に分けてそれぞれに対する回答を得ることも効果的です。

まとめ

今回の記事では、ChatGPT の応答品質を向上させるためのプロンプトエンジニアリングについて解説しました。明確な質問や指示、具体的な情報の提供などを意識することで、ChatGPT をより効果的に活用することができます。この記事が、ChatGPT に興味を持つ皆様にとって有益な情報となることを願っています。ぜひ、ChatGPT に与えるプロンプトの試行錯誤を通じて、業務効率の向上や新たなビジネスチャンスの創出に役立ててください。