GitHub Packages Container Registry 実践ガイド:DockerHub との比較と選択のポイント
GitHub Packages の Container Registry は、開発ワークフローを GitHub エコシステム内に統合したいチームにとって魅力的な選択肢です。この記事では、Container Registry の基本から料金体系、DockerHub との比較まで、選択の判断材料となる情報を詳しく解説します。
GitHub Packages とは
GitHub Packages は GitHub が提供するパッケージホスティングサービスで、npm、Maven、NuGet、RubyGems などの様々なパッケージタイプに対応しています。その中でも Container Registry は Docker イメージを保存・管理するためのレジストリサービスで、2020年に beta 版として導入され、現在は正式にサポートされています。
Container Registry の特徴
GitHub Container Registry (ghcr.io) は以下の特徴を持っています:
- GitHub リポジトリと直接連携
- きめ細かいアクセス権限の設定が可能
- GitHub Actions との緊密な統合
- コンテナメタデータのサポート
- リポジトリからの独立した管理
料金体系:無料枠と従量課金
GitHub Packages の料金体系は比較的シンプルですが、使用量によっては予想外のコストが発生する可能性があるため、詳細を確認しておきましょう。
パブリックリポジトリ
パブリックリポジトリに関連付けられたパッケージは完全に無料で利用できます。オープンソースプロジェクトであれば、ストレージやデータ転送の制限を気にする必要はありません。
プライベートリポジトリ
プライベートリポジトリに関連付けられたパッケージは、一定の無料枠を超えると従量課金が適用されます:
無料枠
- ストレージ: 2GB/月
- データ転送: 10GB/月
無料枠超過時の料金
- ストレージ: $0.08/GB/月
- データ転送: $0.50/GB
重要な料金に関する補足
料金体系を理解する上で、以下の点に注意が必要です:
-
GitHub Actions 経由のデータ転送は無料:
- GitHub Actions ワークフロー内でパッケージをプッシュまたはプルする場合、データ転送料金は発生しません
- GITHUB_TOKEN を使用して認証している場合、GitHub Actions からのダウンロードと見なされます
-
外部からのアクセスには料金が発生:
- ローカル開発環境からのダウンロード
- CircleCI などの外部 CI サービスからのアクセス
- Kubernetes クラスターからのイメージプル
-
ストレージ料金は継続的に発生:
- 使用していないイメージや古いバージョンも含めて、保存されているすべてのイメージにストレージ料金が発生します
- 定期的な不要イメージのクリーンアップが重要です
GitHub Container Registry のメリット
1. GitHub エコシステムとの統合
- GitHub リポジトリとの直接的な連携
- イシューやプルリクエストとコンテナの関連付けが可能
- GitHub Actions ワークフローとの緊密な統合
- GitHub のユーザー権限モデルとの一貫性
2. セキュリティ機能の強化
- 脆弱性スキャンの統合
- Dependabot アラートとの連携
- パッケージの署名と検証
- きめ細かいアクセス制御
3. ワークフロー効率化
- CI/CD パイプラインでの自動ビルドとデプロイの簡素化
- GitHub Actions との連携による自動化の容易さ
- コードとコンテナの一元管理
GitHub Container Registry の課題と注意点
1. 認証の制限
- 個人用アクセストークン(PAT)に依存する認証方式
- 組織レベルのトークン管理の難しさ
- GitHub App installation Access Token のようなより柔軟な認証方式はまだサポートされていない
- 例外として、GitHub Actions 内では GITHUB_TOKEN を使用して認証が可能なため PAT を使わずにセキュアにアクセスできる
2. 組織での管理における課題
- イメージをプッシュするユーザーは対象組織に所属している必要がある
- 外部の開発者やサービスがイメージを pull/push する必要がある場合、その目的だけのために Organization にユーザーを招待したり、既存メンバーの個人アクセストークンを共有してもらうといった、セキュリティ上好ましくない対応が必要になることがあります
- 個人用アクセストークンを組織で一元管理できない
- 過剰な権限を持つトークンが発行される可能性
3. コスト管理
- 無料枠は小規模プロジェクトには十分だが、大きなイメージや頻繁なプル/プッシュを行う場合はすぐに超過する可能性
- イメージサイズの最適化やライフサイクル管理が重要
DockerHub との比較
GitHub Container Registry と DockerHub はどちらもコンテナイメージの管理に特化していますが、いくつかの重要な違いがあります。
コスト面での比較
DockerHub:
- ストレージやデータ転送に対する従量課金なし
- ユーザー単位の固定料金体系(例: Team プランだと 1ユーザーにつき $15/月)
GitHub Container Registry:
- パブリックリポジトリは無料
- プライベートリポジトリは無料枠あり (2GB ストレージ、10GB 転送/月)
- 無料枠を超えると従量課金
- GitHub アカウントに紐付く料金体系
セキュリティと権限管理
DockerHub:
- Organization 起点でのアクセス権限管理が可能で、組織全体でのアクセス制御を一元化できる
- チームベースの権限設定により、特定のチームに特定のイメージへのアクセス権を柔軟に付与できる
- 組織で管理可能なアクセストークンを発行でき、個人ではなく組織の資産として適切に管理できる
- トークンの権限範囲を細かく制御でき、最小権限の原則に基づいたセキュアなアクセス管理が実現可能
- トークンの失効や更新を組織管理者が一元的に行えるため、セキュリティインシデント発生時の対応が迅速
GitHub Container Registry:
- リポジトリや組織との統合された権限管理
- 個人用アクセストークンに依存
- 組織レベルでのトークン管理が課題
- 回避策として、組織として振る舞う組織専用アカウントを作成し、そのアカウントで個人用アクセストークンを発行する方法も考えられます
機能と統合
DockerHub:
- 自動ビルド機能
- Docker エコシステムとの緊密な統合
- Docker Hub 公式イメージへのアクセス
GitHub Container Registry:
- GitHub Actions との緊密な統合
- GitHub リポジトリとの連携
- GitHub のセキュリティ機能との統合
実践的な選択ガイド
以下のような場合は GitHub Container Registry が適しています:
- GitHub をメインの開発プラットフォームとして使用している
- GitHub Actions を CI/CD パイプラインとして活用している
- コードとコンテナを同じプラットフォームで管理したい
- パブリックリポジトリが中心のオープンソースプロジェクト
以下のような場合は DockerHub が適しています:
- 外部システムや第三者サービスからのコンテナアクセス管理が必要:
- 組織レベルでのアクセストークン発行・管理により、外部サービスや CI/CD ツールからのアクセスを安全に制御できる
- 個人に依存しないアクセス管理が可能で、メンバーの入れ替わりがあっても運用に影響が少ない
- Kubernetes クラスターや本番環境など、様々な環境からのイメージプル権限を組織として一元管理できる
- 予測可能な固定料金体系を好む
- 大量のコンテナイメージを扱う
- Docker エコシステムとの連携を重視
まとめ
GitHub Container Registry は GitHub エコシステムと緊密に統合された強力なコンテナ管理ソリューションであり、特に GitHub Actions を活用したワークフローに適しています。一方で、認証メカニズムの制限や従量課金モデルは考慮すべき点です。
DockerHub は組織レベルでのトークン管理や予測可能な料金体系を提供するため、大規模な組織にとっては依然として魅力的な選択肢です。
選択の際は、現在のワークフローへの統合のしやすさ、長期的なコスト、セキュリティ要件のバランスを考慮し、チームに最適なソリューションを選びましょう。
参考文献

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